世の中の激動を背景に、企業の事業転換や新規事業の模索、はたまた個人での起業など、何か新しい事業をしなくてはという世情が日に日に強くなっていると感じます。
ただ、これまで新規事業なんて、関わったことも意識したこともない人にとっては、
『何から手をつけたらよいのやら・・』
というのが正直かと思います。
また、事業のネタが社内や身近にあって、気にはなってるとしても、それをどうやったら事業の体裁にできるのかが手順がよくわからないというパターンもあるかと思います。
今回は、この『事業ネタを見つけた後の事業化検討』の部分を5ステップで解説してみます。
あんまり抽象的なお話ばかりでも分かりにくいかもしれないので、『やきいもの屋台はじめたい!』というシチュエーションで考えてみましょう!
1.ビジネスモデルの構築
一番最初には、『ビジネスモデルの構築』(開始前の想定)ということをやります。
ここでは、「キャッシュフローの視点」「メリットフローの視点」という二つの視点からお話をくみ上げていきましょう。
【1.①キャッシュフローの視点】
まずは、先立つものをということで、お金の流れの工面を大雑把にでもやりましょう。
この時意識すべき公式があります。
売上 ー 支出コスト =利益 ⇒分配+再投資 =事業拡大
どれも、聞いたことがある当たり前の言葉かと思いますが、いざ事業化検討を!となると、この大事な大原則をすっとばしてあちこちで迷子になっている人を本当にたくさん見かけます。
事業というと、売上ばっかり、はたまた初期コストばっかりに目が行って、思考が停止してしまう人がいますが、それでは議論も進まず、もったいない時間が過ぎていってしまっています。
基本に立ち返って、まずはこの公式にあてはめて、事業のキャッシュフローを整理してみましょう。
【焼きいも屋台の例】
- 売上 =焼き芋の販売売上 (設定単価 × 1日販売個数 ×営業日数)
- 支出 =屋台の運営費 (屋台設備減価償却 +一日の労働単価 ×営業日数)
- 分配、再投資 =労働者は出資者への利益還元 +再投資(設備増強など)
税金などは、所得(課税所得)にかかる話なので、ここでは一旦おいておきましょう。
現在わかっている数値をまず当てはめてみます。そこでおおよその「着地予想」をするのですが、新規事業と言いうやったことの無い事業なので、当然不明な数値というのもでてきます。
この不明な部分を、限られた時間で、【推定】【断定】【特定】してはめていくというのが、必要になる作業です。
【推定】=まったくのあてずっぽう、ただ何もないよりマシというレベル
【断定】=ネットや一部有識者の意見や知識、データ等 必要以上、十分以下
【特定】=完全に正確必要な情報 ターゲット自身に聞いた話など
とにかく最初の数式には何かしらの数字を入れなければ、何も機能をしないので、上のような考え方で、とにかく数字を埋めてみましょう。
【1.②メリットフローの視点】=メリットもサイクル化しているか
◆そもそもそれで(その事業)、わくわくするか? すぐにでも始めたいか?
結局、心動くビジネスでないと、「続かない」「広がらない」ということになってしまいます。
重要なのは、決裁者への忖度や媚びではなく、事業スタッフやユーザー満足といったものも含めて、
「その事業の登場人物の全員の心の動き」と言えます。
何を、突然抽象的なことを、、と思う方もあるかもしれませんが、これ絶対です。
- 感動(感情)なくして、行動なし
- 行動なくして、革新なし
- 革新なくして、成功なし
事業とは大きくとも、小さくとも必ずそこに誰かヒトが存在し、ヒトの行動の源泉は必ず感情であると理解をしているか、いないかで結果に天地の開きができます。
事業スタッフのやる気と希望
⇒事業者の納得 ⇒サービスリリース
⇒ユーザー満足 ⇒事業拡大(売上・利益)
⇒新たな事業のモチベーションへ
こういう、感情スパイラルが作れそうかという軸が一つ、必要になります。つまりこの場合、最初に新規事業を検討している「アナタ」の気持ちがどう動いているかがまず重要です。
ここでもう一つ、照らし合わせておきたい項目をキーワードで例示すると、
収益性、発展性、革新性、社会性
という部分でしょうか。いずれも、自分や関係者の感情にどう響くかという点を検討してみます。
2.損益計算~「管理会計」を踏まえた検討
事業を始めるのに(判断するのに)必要なのは、簿記などの会計知識の前に、「分析済み」の数値配置=管理会計の考え方になります。
【2.①売上、支出コスト のできるだけ正確な捻出】 =現有戦力の棚卸
無理のないと思われる労力と支出の中で、まずはぱっとどれだけのことができそうかを売上、支出コストの2面からとにかく洗い出していきましょう。
ここで、自社や自分の現有戦力の棚卸をしておくと、のちの検討がスムーズになります。
【焼きいも屋台の例】
- 売上 ⇒近所のオフィス街でランチ時とおやつ時間帯に○○人くらいは人手がありそう
- 支出 ⇒使ってない軽トラが使えそう。つぼ焼きのつぼはあるけど、時間がかかりそう。ガスなどのヒーターを使ったら効率よさそうだが、仕上がりや初期投資に見合うか?
【2.②損益分岐点、操業停止点を見極める】 =固定費と変動費
ここで、コストについては「固定費」と「変動費」の大きく二つに分類します。割り振り方は、管理会計においては、自社や自分の置かれた状況に応じて柔軟に変更が必要です。
固定費 =売り上げゼロでもかかるコスト ※不動産(土地建物)、専用設備 など
変動費 =売り上げに応じてかかるコスト ※人件費 水道光熱費 仕入れ原価 など
固定費と変動費の分け方の工夫ですが、「売上があってもなくてもかかるコストか否か」というのが、一番関係者間での共通認識にしやすい基準かと思います。
ここでよく人件費は、固定費だ!変動費だ!と違う意見が出やすいですが、「新規事業」という意味では変動費に入れる方が考えやすいです。おそらく、その新規事業に専任貼り付けということにはならないだろうというのが、その理由です。
固定費と変動費までなんとか出せたら、想定売り上げと比較して、黒字になるか赤字になるかを試算してみます。
ここで、損益分岐点と操業停止点という考え方が出てきます。
売上が、変動費だけは賄えているが、固定費は賄えていないという全体では赤字の状態。
売上が、固定費はもちろん、変動費も賄えていない。やればやるほど恒常赤字の状態。
ここでは柔軟な経営評価が必要になります。変動費(人件費等)だけでも賄えれば、○年耐えれば資産償却が終わって黒字化するなどの時間軸を加えた判断をしてみます。
試算で出した売上と支出の関係が、5年後10年後にどうなりそうかを検証してみましょう。
3.ここまで考えてやっと「市場調査」してみる =論理の補強
やみくもにデータ収集をしはじめても、キリがなく、判断基準もないです。これが一番の時間のムダなので、まずはこれまでの4段階の検討をクリアして自分なりの仮説を必要十分に立ててから、実際の市場調査に乗り出しましょう。
感情と理屈を整理したうえで、最適な補強データ(市場データ)を
探しに出かけよう。(ネット、本屋、図書館、経験者、一般ユーザー感覚(口コミ))
- 売価の相場~地域や販売手法、時間帯に差はあるか?
- 各主要コストの確認、低減方法の模索 ~設備の変更、手法の刷新
- 顧客ニーズや期待値 ~定数アンケート どこでどれくらい売れそうか
⇒「世の中平均」と「自分たちの考えた事業」のギャップを見つける、際立たせる
このギャップが【感情ギャップ】を生み出し、事業推進の助燃材となります。
まとめ
新規事業という「未知なモノ」に挑むための心得としてステップを紹介してきました。
最初に、自分と関係者が「納得できる判断基準」という理屈を整理
①売上利益と今後の発展性
②収益性、発展性、革新性、社会性、などから見た事業に取り組みメリット
立てた仮説の確実性を増すために、必要に応じて効率的な情報収集
これらのステップは、既存事業の見直しをする際にも有用に機能すると思います。
日々の変化は目まぐるしく、新しいことへの対処はいつも求められています。たくさん発生するアイデアや案件を少しでも効率よく、一定の正確性を担保して対処をしていくことは、そのまま生存力、成長力につながります。
これからも、ばりばり一緒にがんばりましょう!! 笑
『新規事業、何かやれ!』、、って無茶振りされてます。。